かとのぼのマイコード・マイライフ

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塩野七生の「嘘の効用について」の文章が説得力があり面白い

男たちへ フツウの男をフツウでない男にするための54章 (文春文庫)

塩野七生さんのエッセイ「嘘の効用について」の文章が面白かったので、備忘録がわりに記事にします。端的にいうと、嘘はうまくつけば物事の達成の力になるという話です。

エッセイ「男たちへ」

「嘘の効用について」の文章は塩野七生著「男たちへ」の第5章に収録されています。塩野七生(しおのななみ)と言えば「ローマ人の物語」や「チェーザレ・ボルジア」など、ヨーロッパの歴史小説を書かれる人です。

今回たまたまエッセイを手にとりました。

選んだ理由にもなるのですが題名が「男たちへ」という凄いタイトルで、副題には「フツウの男をフツウでない男にするための54章」というこれまたパンチが効いたものでした。

普段、ローマ時代の偉人などヨーロッパの最強の男たちを相手にしている塩野七生さんですから、彼女が男に何か言うならそれは凄いことに違いないと思ったからです。

文庫の裏表紙の説明もなかなか攻めています。

インテリ男性はなぜセクシーでないか?浮気弁護論、殺し文句についての考察、男の色気、嘘の効用について。成功する男、わが心の男。腹が出てきたらおしまいか等々、塩野七生が男たちに贈る辛辣にして華麗、ユーモアと毒に満ちた54章の「男性改造講座」。

若者から老人まで、男が本当の大人になるための最良のバイブル

一章ごとに凄く面白いんですが、5章の「嘘の効用について」がなるほどなぁと思いました。

嘘は絶対に許さないマインドを変えよう

母親は普通、自分の子供が嘘をつくことを嫌い嘘をつかせないようにします。

しかし、彼女はその教育方針をそろそろ改めましょうよと主張します。

私は、何にでも嘘をつけといっているのではない。嘘を有効につくことは、真実さえ言っていれば良いのと違ってたいへんに頭の良いことが要求されるのだ。そうそう誰にでもすすめられるのではない。世にいう見えすいた嘘とは、頭の悪い人のつく嘘の典型で、もちろん、つくよりもつかない方がよいに決まっている

彼女は、嘘を全面的に肯定するのではなく、賢い人が適切につくから意味があると言っています。

つまり、嘘とは、真実を言っていては実現不可能な場合に効力を発揮する、人間性の深い洞察に基づいた、高等な技術の成果なのである。

彼女が言う「嘘の効用」とは、「真実を言っていては実現不可能な場合に効力を発揮する」ことなのです。

例えば、あるプロジェクトで、ほとんど絶望的な苦境に陥った時に、リーダーが余裕に構えて「俺に任せておけば大丈夫だ」と言って、その言葉で部下の皆が勇気付けられて頑張れるのは「嘘の効用」と言えます。

また、彼女はこんなことを言います。

人間というものは100%の嘘をつくことはできないとも思っていた

 全く心にないことに対して人間は嘘をつけないのです。逆に言えば、最低でも1%くらいは真実だと思っているのです。

もし1%でも真実が含まれているなら、行動によって真実のパーセントを増やすことは可能です。

つまり、嘘の効用とは、一見不可能に思えるレベルまで人を到達させる可能性がある手段ということです。

なんだかこれはベンチャー企業のスピリットに似ていますよね。皆んなが無理だと思っていて、挑戦する本人も確実な確信がない中でビジネスをするのがベンチャーですから、まさに嘘の効用これに極まれりです。

わが日本は、嘘から出たマコトという深い洞察をあらわす格言をもつ国

日本は嘘の効用をすでに格言にしています。

バカな嘘はいけませんが、嘘の効用を生かして色んな不可能に挑むマインドを持ちたいなと思いました。

 

男たちへ フツウの男をフツウでない男にするための54章 (文春文庫)