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上橋菜穂子「鹿の王」のレビュー【書評】

 鹿の王 1 (角川文庫)

小説「鹿の王」とは?

小説「鹿の王」は上橋菜穂子さんの小説です。ジャンルはファンタジー小説であり医術小説です。文庫では4巻で完結します。

 

鹿の王文庫全4巻セット(角川文庫)

 

2014年に刊行され、2015年には本屋大賞受賞作となっています。

著者の上橋菜穂子さんは「精霊の守り人」でご存知の方も多いと思います。

鹿の王の簡単なあらすじは、二人の全く違う人生を歩んできた男性が、共通の問題を通じて深まり、繋がっていく話です。

この物語は2人の男を中心としてストーリーが展開されていく。 一人は、飛鹿(ピユイカ)と呼ばれる鹿を操り、故郷を守るために戦った独角(どっかく)という集団の頭だった、ヴァン。しかし戦いに敗れ、地下のアカファ岩塩鉱で働かされていたのだが、ある晩、謎の獣が岩塩鉱を襲撃、獣は人々を次々と噛んでいった。その後、岩塩鉱で謎の病が流行しヴァンだけが生き残った。ヴァンは地上で侵入した家の竃の中からもう一人の生き残った幼児(女の子)を見つけ、ユナと名づけて一緒に生きることになる。 そして、もう一人の主人公は東乎瑠(ツオル)帝国の医術師ホッサル。ホッサルは病の原因究明のため岩塩鉱に行く。そこで脱走防止の足枷がひとつ外れているのが見つかりヴァンの脱走が発覚。同時に噛まれても病にかからない人もいる事がわかった。この一件でホッサルの従者であるマコウカンは生き延びたヴァンを捜索することになる。また、この病がかつてオタワル王国を滅ぼした黒狼熱(ミツツアル)ではないかとホッサルは疑いはじめる。 病に関する多くの謎を秘めたまま下巻へと続く。

鹿の王 - Wikipedia

鹿の王はファンタジーの世界なのに本格的な医術小説を読んでいる気持ちにさせる

鹿の王が小説として面白いのが、物語はファンタジーの世界なのに(ピュイカという鹿のような動物がいるなど)物語のコアになる謎の病「黒狼熱」の原因を探るストーリは医療サスペンスの様相を呈している点です。

物語はファンタジーなのに、物語を読んでいるとリアルの世界で病気の原因を探すサスペンスを読んでいるような不思議な気になります。それだけ、上橋菜穂子さんが書く小説がリアリティーを感じてしまうほど作り込まれた世界観だからです。

自分たちの住む世界とは違うもう一つの別の世界があるようにまじまじと想像してしまいました。

魅力的な登場人物

ストーリーもさることながら、登場人物たちが魅力的です。

孤独を抱え生きるピュイカ乗りのヴァン、医術の天才でありながら市民の気持ちも汲み取れる柔軟な心の持ち主のホッサル。鉱山でヴァンと共に生き残った幼子のユナなど、もう10年くらい知っている人間のような、そんな気持ちと愛着を持たせてくれます。

 

読んだ感想

読んだ当初はちょっと理解ができませんでした。まず冒頭のホッサルとその祖父とのやりとりの意味が全くわからなかったからです。それがまさか最後に繋がるとは思いませんでした。

私は上橋さんが描く戦闘シーンが大好きで、「精霊の守り人」では達人達の戦いの様が描かれており嬉しかったのですが、この「鹿の王」では争いの描写は少なめとなっています。それよりは、原因不明の病とどう戦うか?という、人間VS病の構図と変化していると感じました。病との戦いも謎を追って、人間が病を追い詰めていく様を体験でき、大変面白かったです。

鹿の王を読んでいると、彼らが住む世界観に気がついたら没頭できるので本当に読んでいて楽しいです。

 

ファンタジーが好きな人、中編くらいの軽めの小説を読みたい人におすすめ

ファンタジーが好きな人は掛け値無しにオススメしたい小説です。また、少し軽めで何か面白い小説を探している人も是非読んでほしいと思います。

私は、あまりにストーリーの展開が面白く、その上テンポがいいので、夜寝る間も惜しんで読んでしまいました。

良い小説に出会うと夜更かししてしまうのですが、それが面白いんですよね。

 

鹿の王文庫全4巻セット(角川文庫)

 

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www.katonobo.com

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