カニを食う勇気
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ずっと考えている。
寒い冬の夜、テイクアウトしたコーヒーの暖かさを手袋越しに感じながら、ゆっくりと息を吐く。
僕はあらん限りの想像力を駆使して、ただ何度も同じ問いを心の中で反芻した。
そしてその答えは常に「No」だった。
おそらくその問いの根源は、人間が文明を築くことができた原動力であり、その原動力は排斥の対象の危機に晒されながらも、人類を前に進めていった。
再び僕は考える…。
無駄なことだってわかっている…。どんなに考えても行き着く答えは一緒だ…。
問いはシンプルであり、同時に暴力的なほど複雑なものだった。
その問いはこうだ。
カニの姿を初見で見て、美味いという事前情報なしの状態で食えるか?
初見であの生物を食品として認識できる気がしない…。
なぜあのフォルムで食べようと思いつけたのか…。
けど、僕はもう知っている…。
カニは美味い。と…。
カニが食べたい季節になりましたね…。カニカニ。
終わり。
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